卒業生マイゼミがスタートします!

卒業生マイゼミに密着した連載(全5回程度を予定)が始まります。この連載では、卒業生マイゼミの発起人である八木進くん(環境3年)のインタビューをもとに、未来創造塾SBCの教育の未来を探っていきます。

卒業生マイゼミインタビュー (聞き手:松岡 大雅)

松岡 まず最初に、今回行われる「卒業生マイゼミ」の概要をお話しください。

八木 卒業生の方が、普段なかなか仕事が忙しく実現できないテーマや、事業化が難しく実験しにくいテーマをSFCに持ち込んでもらい、SFC在学生と共にプロジェクトを立ち上げ、SBCで滞在をしながらプロジェクト進めていくというものです。

松岡 卒業生とSFC生がタッグを組むという形になると思うのですが、八木くんは卒業生のニーズと大学生のニーズがどのようにマッチングすると思っているのですか?

八木 私は卒業生が会社で自分のやりたいことができていないのではないか、という仮説を立てました。SFC卒業生は2、3年で会社を辞めるという話をよく聞いていたので(笑)そこで、その仮説のもと、数名の卒業生にヒアリングしたところ、複数の組織に所属されるなど、一部の卒業生は本業とは別に自分のやりたいプロジェクトを実施する機会を見つけていました。しかし、そうでない人もいる訳で、そういう方たちに「自分のゼミを持てるならどう思いますか?」と聞いたところ「是非やりたい!」という声が多数返ってきました。また、大学生のニーズとしては、どの進路に進むかをリアルに考える機会が足りてないと思っていました。インターンシップはどうしても雑用が多くなってしまう。またプログラムが優れているインターンシップでも、すでに課題が提示されていて、それを解決するだけのものが多いです。これでは、課題を発見して解決する真の体験を得ることができない、という問題もあると考えています。これらのニーズを満たすため卒業生マイゼミを提案しました。

松岡 この「卒業生マイゼミ」という企画がSBC入門という大学の授業に組み込まれるということですけれども、実際は、どのように進んでいくのでしょうか?

八木 まず、SBC入門は前半と後半に分かれていて、前半はSBCについてknowingする、後半はSBCでdoingする、という構成になっています。前半では、長谷部葉子さん、加藤文俊さん、小林博人さんといった滞在型教育やSBCに関わっている先生方によるレクチャーです。学生たちにSBCとは何か、大学とは何か、ということを考えてもらう時間になります。そして、そこで学びに対して頭を刺激されたところで、後半の卒業生マイゼミがスタートします。

松岡 となるとだいたい2ヶ月くらいの間、卒業生マイゼミが開かれることになると思うのですが、その短期間でどのような目標を設定しているのでしょうか?

八木 今期はマイゼミが3つ開講されるのですが、目標はそれぞれ違います。

松岡 どのようなものがあるのでしょうか?

八木 1組目は、21世紀の地主像を考えようというゼミです。従来の土地活用は単に収益増加のために活用されてきましたが、そうではなく、地主の人と共に持続可能性のある土地活用の新しい方法を考えていくというテーマです。目に見えない資産の増加を目指した土地の使い方をSFC生と共に考えていくのが、このマイゼミのテーマです。これは設計事務所、並びに一般社団法人鎌倉生活総合研究所で活動されている宇賀さんによるゼミで、宇賀さんは土地活用についてのプラットフォームをつくりあげたいと考えていらっしゃいます。

松岡 2つ目のマイゼミはどんな内容なのでしょうか?

八木 2つ目は、遠藤忍さんというSFC卒業生で、学生時代から未来創造塾に関わっていた方のゼミです。この方のゼミは新しい新入社員研修について一緒に考えるという内容です。これは社会に出たばかりの若手層が仕事で疲弊してしまっていることを問題意識としてスタートしたもので、その原因を考え、それに対するソリューションを出すことを目標としています。こういった議題が出てくることがいかにもマイゼミらしいなぁと僕は思っています。新卒が疲弊しているという現象は、なかなか分かり難いですし、とても現場感のある課題であるというところがポイントだと思います。これがもし企業であれば、どのように収益が増加するのか、ということばかりを考えて、プロジェクトが却下されてしまうということが考えられます。しかし、ここはSFC。こういった議題を扱えるのがSFCらしなと思っています。こういった、一見収益につながるかわからないテーマを僕は扱えるのがこのマイゼミの良さだと思っています。

松岡 3つ目はどのようなものなのでしょうか?

八木 3組目は、株式会社GROOVEの田中謙伍さん発案のマイゼミで、主にアマゾンのコンサルティングをされています。このゼミでは、商品開発までのビジネスモデルをデザインすることをテーマにしています。前の2つのゼミとは雰囲気は変わりますが、他の授業よりもより実戦的な学びを得ることができます。

このように、卒業生が社会のなかで感じている最先端の問題意識や可能性をプロジェクト化して、学生がリアルな空気感のなかで卒業生とプロジェクトに取り組めるというのがこのマイゼミの特徴です。インターンシップと大学の授業の美味しいとこ取りをしたような内容になっています。

松岡 個人が1ゼミ、法人が2ゼミということですが、これには何か狙いがあるのでしょうか?

八木 個人のマイゼミについては卒業生が無料で開いています。ゆくゆくは5万円を取るなどといったことも考えていますが、今回は最初ということで、マイゼミ自体の質が担保されていないということもあり、金額は設定しませんでした。法人は一律30万円をいただいています。将来的には一般社団法人やNPOは30万、企業は200万などといった形で募集したいと思っています。こうすることで、マイゼミ自体でお金が回るビジネスモデルとなるようにしています。

松岡 少し全体のプログラムのことに話を戻しますね。今回この2ヶ月のマイゼミ期間をどのように使っていくのでしょうか?

八木 今回2ヶ月間で3回の合宿を滞在棟1で行います。この合宿には卒業生の方々も参加します。初回の合宿では、今後どのようにゼミを進めていくのかについて考える会。2回目の合宿は中間発表の会。3回目の合宿は最終発表の会という形で考えています。合宿と合宿の間も授業では教員やSAがメンタリングを行い、卒業生と学生は適宜連絡を取って、ゼミごとに様々な形で議論を重ねます。

松岡 この短期間で3回の合宿を組み込むというのは、新しい形の滞在型教育だな、と思いました。とても面白い試みですね。しかしながら、現状滞在棟を使うと1泊約2500円の費用がかかるという中で、3泊となると個人の出費がかなりのものになりそうなのですが・・・

八木 先ほど申し上げたビジネスモデルを思い出してください。そこで法人から取った数十万のお金があるので、滞在費や食費はそこから出すことができます。学生の負担はゼロ円です。

松岡 それはすごいですね!

八木 はい。また余ったお金は未来創造塾やSBCへの寄付などに回すことで、ゆくゆくは未来創造塾SBCが経済的に自立循環するモデルになることを目指しています。

松岡 ますますこれが数年後、数十年後にどうなっているのかが気になるところですね。八木くんは長いスパンではどのようなビジョンを描いているのでしょうか?

八木 ∇型人間を育成していくためのモデルケースを確立することですね。SFCはT型人間を育成するのには成功している印象があります。ただ、SFCは常に最先端だからこそ、それが裏目に出て“時流に乗りやすい”ので、T型人間になろうと思えばすぐになれる。そうすると、「なんであなたはドローンやAIに取り組んでいるの?そこにどんな思い入れや個人的な背景があるの?」と聞いて、等身大な回答ができる人はどのくらいいるのかと思うと疑問に思いますね。そこに自分なりの「哲学」があるか。時流に乗って興味本位で身につけたスキルなのかそれとも、「実現したい未来」のために必要に応じて身につけたスキルなのかで全然違ってくると思います。

以上の問題意識から、∇型人間を育成していくための方針を、マイゼミを実践しながらもっと具体的に追求していきたいと思います。

それから新しい資本主義形態であるボランタリー経済の、大学を起点とした具体的なモデルケースとしてマイゼミを位置付けることも視野に入れています。ボランタリー経済によって追求されるのが主に各個人にとっての「幸福」なのですが、そもそも「幸福」とは何でしょうか。この問いを考えるにあたって、参考となるのがSDMの前野隆司教授が提唱されている「幸福学」ですね。これによると幸福には「自己実現と成長」、「つながりと感謝」、「まえむきと楽観」、「独立とマイペース」という4つの因子があるそうです。そこで、マイゼミを卒業生の観点からとらえると、自分が取り組みたいプロジェクトを立ち上げることで「自己実現と成長」ができ、その際にプロジェクトを一緒に取り組む現役生や教員、他の卒業生に「つながりと感謝」ができ、仕事として行う場合と違って、実験的に学生と行うことができるという点で、失敗のリスクを気にし過ぎることなく「独立とマイペース」を保って、「前向き・楽観的」に挑戦できるようになるということが期待できます。

マイゼミはまさに「幸福」を追求するための「大学の役割とは何か、これからの大学教育のあるべき姿は何か」に対する答えになるのではないかと考えています。

松岡 とても魅力的な未来ですね。これは本当に楽しみなチャレンジですね。期待しています!ありがとうございました。

八木 ありがとうございました。

————次回は第1回合宿後にお届けする予定です。お楽しみに!

Author: 松岡 大雅